■継がれる前作

前作『蠢動-しゅんどう-』、そこには勧善懲悪ではない、正義の激突が描かれていた。
幕府、藩、そして武士として、立場の違う人間たちがそれぞれの正義を貫こうとするがゆえに葛藤し、あるいは斬り合う。
そこに正義はあるが善はなく、悪はないが非情はある。守らなければならないもののため、曲げてはならないもののため、切り捨てられるものがある。
研ぎ澄まされたストーリーや映像、出演陣の熱演に殺陣……前作の魅力は語りつくせない。
直木賞作家の高橋克彦氏が、「小林正樹監督の『切腹』以来の大傑作。風格と緊張の波に胸が打ち震える」と絶賛した前作は、紛うことなき“本物”の時代劇だった。
だが、前作は到達点ではない。出発点だ。“三上康雄監督作品”はまだまだ先へと進む。

■走りはじめた次作

製作発表前で詳細を明かせないが、待望の次作はすでにシナリオ(準備稿)が完成し、ロケハン、キャスティングなどのプリプロダクションが走りはじめている。
この準備稿を拝読した。前作を支持した人々の期待を裏切らない、いや、さらに上を行く本格時代劇だ。熱波を食らったような衝撃と興奮を覚えた。
観客の度肝を抜く作品になる。実在した歴史上の人物を主人公に、やはり、さまざまな立場の正義がせめぎ合う群像ドラマが展開する。
史実が残されているものに関しては史実に沿いつつも、イマジネーションの余地がある部分では魅力的な創作人物やエピソードを絡ませ、
登場人物たちの行動原理や心情、人となりを骨太く描いていく。

■ダイナミックな次作

前作の“静”の緊張に対し、次作はいわば“動”の緊迫。前作の登場人物たちは流れの中、否応なしの状況へと巻き込まれていくが、
次作の主人公は自らの意志で時代の流れに飛び込もうとする。その主人公の正義と、望むと望まざるとにかかわらず彼と関わっていく人間たち、
それぞれの正義、それぞれの信念、それぞれの人生が交錯する。
多層的な物語は登場人物の誰に寄り添って観るかでがらりと様相を変える。誰にとっても、きっと自分と重なる部分があるはずだ。
ドラマは前作からさらに深くなり、殺陣場面はさらに迫力を増す。果たしてこのダイナミックな物語を、どんな俳優たちがどのように演じるのか、
そして何より三上監督がどのように映像化するのか。今から期待が膨らむ。

■魂に問いかける次作

だが、三上映画を三上映画たらしめるのは、単に力を持った出演陣、制作陣によるものだけではない。彼らすべてが、本物の映画を創るという監督の揺るぎない決意に共鳴する。だからこそ、自ら「したい」「やりたい」という意思を持って集まる。
三上監督とスタッフやキャスト、そして三上作品に触れた観客たちの想いが重なり、連なり、魂の激動を巻き起こす。
前作が研ぎ澄まされた一本の日本刀なら、次作は間違いなくその刀を振るう真剣勝負だ。
人として、何を信じ、どう生きるのか。観る者の心を貫き、魂に問いかける。

(予 告 篇)